断酒後の問題
アルコール依存症治療の第一歩は、まずアルコールをやめることだが、断酒が継続されてもこれまでの飲酒による身体問題や家庭問題、さらには職場での問題など「アルコ
ールさえやめれば一件落着」ではすまないことが少なくない。従って、身体治療が一段落し、ミーティングヘの参加が定着して病気の理解が深まってきたら、患者は平行して
職場復帰や新しい仕事を探すなどの作業にかからなければならない。たいていの患者はここで、人間関係の問題が表面化してくる。
アルコール依存症者の多くが、「あなたは依存症です」と医師に診断された後も、変わらぬ飲酒の付き合いを求め、自分に都合のいい人間関係を求める。しかし、それは無
理な注文である。それが自分の意志であるなしに関わらず、結果的にたびたび妻や家族を裏切り、職場の人間関係までもだめにしてしまった今、それは、アルコールを飲むこ
とで逃避してきた素面の社会生活へのツケ、といわれてもやむをえないであろう。(世良)
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